ラクルト・ゴドビヨン|シャンパーニュ・エキュイユ村のレコルタン・マニピュラン
家族の歴史と華麗な転身
シャンパーニュのプルミエ・クリュ(一級畑)に格付けされているエキュイユ村を中心に約8haの畑を所有するラクルト・ゴドビヨン。
その起源は、父方の祖父母であるLACOURTE(ラクルト)と母方の祖父母であるGODBILLON(ゴドビヨン)が、先代から脈々と受け継いできたようにブドウ栽培を営むことから始まります。
当時、収穫したブドウはすべて大手シャンパンハウスに販売する仕組みでした。
「時には朝5時から夜8時まで畑に立つ」と祖母がよく口にしていた通り、放課後の子供たちが手伝わなければならないほどの重労働を強いられる毎日。
しかし、それを生きる理由として捉え、できる限りブドウ畑を買い増すというリスクを厭わなかった先代たちの軌跡を、現当主は誇りに感じています。
【脈々と紡ぐメゾンの軌跡】
1947年、戦争から帰還して間もなく彼らは自社でシャンパンを製造・販売するという新たな冒険に乗り出し、LACOURTE-LABASSE(ラクルト・ラボワーズ)とGODBILLON-MARIE(ゴドビヨン・マリー)のブランドを掲げ、顧客の車のトランクへボトルを大量に詰め込みました。
1968年には、両親であるジャン=ギ・ラクルトとクローディーヌ・ゴドビヨンが初めて自分たちの手で収穫を迎え、徐々に地位を確立しながら現在の「ラクルト・ゴドビヨン」ブランドを立ち上げます。
当初は数千本のワインを生産し裏庭で瓶詰めや澱抜きを行う小規模な体制でしたが、重要なのはそこではなく、卓越した畑仕事こそが最高のワインを生み出すという本質を既に父親は深く理解しており、そのために自らの生涯を捧げました。
大きな転機を迎えた2006年、リシャール・デヴィーニュとジェラルディーヌ・ラクルトの夫妻は大都市でのエグゼクティブとしての生活を捨て、両親のメゾンを引き継ぎブドウ畑とその価値観へと戻るために共に退職を決意。
アヴィーズの醸造学校で1年間学んだ後に3代目としてメゾンを継承したジェラルディーヌたちにとって、ワインメーカーとしての新たな生活はまさに啓示となったのです。
2012年には協同組合から脱会し完全に独立したレコルタン・マニピュラン(生産者元詰め)となりましたが、数々の労力はかかるものの「妥協をしない、忍耐強く、がキーワード!」とジェラルディーヌは語っています。
オーガニック栽培とビオディナミ認証への取り組み
「素晴らしいワインは素晴らしい畑から、そして素晴らしいブドウからしか生まれない」という信念のもと、多くの時間をさいてブドウ畑は見事に手入れされています。
彼らが貫くのは、ブドウの木を人間のように考え、観察し、育て、テロワールの中心でその資源を見つける手助けをして初めて、ブドウの木はその真髄を現すことができるという哲学。
何よりもブドウ畑が最優先であるという信念を持つ彼らは、土壌と環境を守るために全力を尽くしているのです。
【100%管理された手作業の美学】
2010年以来、化学肥料を使わずに土壌の生命を維持してきた彼らは、2017年初頭、自分たちの主張を実践していることを示すためにAB(オーガニック農業)ラベルに参加することを決定し、2020年1月にその認証を受けました。
そこからさらに3年間の試行を経て、2022年にはDEMETER(デメター)によるバイオダイナミックブドウ栽培の認証を取得しています。
現在は、ブノワ・ライエ、ヴエット・エ・ソルベ、フルーリーらが所属する「Association des Champagnes Biologiques(アソシエーション・デス・シャンパーニュ・ビオロジック)」や、ド・スーザやガティノワが所属する「Les Mains du Terroir de Champagne(レ・マン・デュ・テロワール・ド・シャンパーニュ)」など、著名なオーガニック栽培のグループに所属しています。
こうした取り組みは、ブドウ畑内における樹木の植え替えや周囲への生垣の設置、近年注目されるアグロフォレストリーの導入など、畑と自然環境を一つの生命体として捉える包括的なビジョンに基づき、生物多様性に不可欠な羊の放牧や鳥箱の設置、さらにはカバークロップの採用にいたるまで徹底されています。
実際の畑作業においては、一般的な季節労働者を頼ることは一切せず、セバスチャン、ファブリス、アレクシスを含むわずか5人の固定チームのみで全行程を完結させ、自社ブドウのみを使用。
彼らがここまで徹底して仕事を完全管理する背景には、ブドウの完全なトレーサビリティ(追跡可能性)を追求することで、単なる栽培者兼生産者という枠組みを超えたいという強い執念があります。
品質を極限まで高める収量コントロールを行い、完璧なタイミングを見極めて収穫に臨むという高い理想は、芽の数を緻密に調整して均一かつ十分な間隔の生育を確保する丁寧な剪定や、春に4週間以上をかけて一本一本の木を厳格に検査し、葉の成長を妨げる芽をすべて取り除くといった徹底的な手作業によって支えられています。
病害の自然な防除や収量の制限に欠かせないこの過酷な工程に加え、棚仕立てを簡素化して芽を適切に分離し、ブドウの房に十分な風通しを確保することで過密状態を完全に排除するこだわりなど、こうした途方もない手作業の積み重ねこそが、ブドウの最適な成熟を力強く支えているのです。

ラクルト・ゴドビヨンの醸造哲学|エキュイユのテロワールを表現するシャンパーニュ
彼らが抱くワインへのビジョンはシンプルであり、何よりも「テロワールが自らを表現するべきだ」という信念のもと、醸造においては「レス・イズ・モア(少ない方が豊か)」の考えが深く貫かれています。
温度調節ができる22~44hlの小型ステンレスタンクでの発酵・熟成では可能な限りポンプの使用を控える一方、エキュイユの森やシャンパーニュ・アルデンヌ産のオーク材を使用した樽での発酵・熟成にいたっては、一切のポンプを使用せず、バトナージュも濾過も行わない無濾過・無清澄で仕上げる徹底ぶり。
各区画のブドウは個別に圧搾・醸造され、マスト本来の特性を保つために重力による濾過を好みながら毎日厳密な温度管理のもとで発酵を監視し、澱引きをせずに翌春の終わりまで澱とともに置くことでワインの個性のあらゆる側面を明らかにしているほか、冬には屋外に出すことで自然な低温安定化を行うなど、素材の力をそのまま引き出すアプローチが徹底されています。
【時の試練と絶賛を浴びる味わい】
セラーでの瓶内熟成は24ヶ月から7年に及び、デゴルジュマン(澱引き)後も平均3~6ヶ月の休眠期間を設けるこだわりがあり、各キュヴェやヴィンテージにおけるドサージュ量は、生き物であるワインとの最高のバランスを追求するために複数回のテイスティングを通して慎重に決定。
マロラクティック発酵(MLF)の比率は少ないか全く行われず、テロワールを隠すことなく砂系を主体とした土壌を見事に表現したシャンパーニュは、堅牢でミネラリーなスタイルとは一線を画す、エレガントで優しいタイプの味わいへと昇華されています。
この才能あふれる味わいには評論家も熱い視線を注いでおり、『Wine Advocate』が「真新しいラベルは、根本的な醸造の変化を外面的に表現しているにすぎない」と質の向上を言及すれば、フランスのワイン専門誌『Terre de Vins』でも「この村の宝石だ」との賛辞が送られるほど。
上級キュヴェにいたっては年産1000本台~4000本台と非常に少ない生産量しかなく、今後注目度が上がるにつれて、ますます入手困難になっていくことは間違いありません。
※インポーターおよび公式情報を基に構成