マストロヤンニ (Mastrojanni) |イタリアワインのカステルヌオーヴォ・デッラバーテの先駆者
創始者の新年「伝統ありき」を継承し続けるブルネッロを代表する生産者。
その味わいは現在でも、数多くの愛好家にとって希少な存在として扱われています。
ワイン評論家マット・クレイマーが「飲まずに死ねない」と明言するイタリア最高のワイン、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。その代表的生産者として、マストロヤンニは数多くの愛好家やプロフェッショナルに愛されてきました。創業は1975年で、これはブルネッロ・ディ・モンタルチーノのD.O.C.G.昇格やバンフィ設立以前のことです。
醸造所と畑はアペラシオンの最南端、カステルヌオーヴォ・デッラバーテの丘陵に位置しています。元々ロレート・エ・サン・ピオと呼ばれていたこの農園は、シルト質や粘土質からなる石の多い痩せた土壌の急斜面にあり、耕作には不向きとされていました。
そのため、創業以前は森と牧草地が広がるのみで、ブドウ畑はありませんでした。しかし、南部特有の温暖な気候に加え、南西から南に開けた斜面は日照が豊富です。
夏は雨が降らず、日中の気温は時には40度にも達しますが、南に迫る標高1,700m級のアミアータ山から常に涼しい風が吹くため、昼夜の寒暖差は15度を超えます。また、アミアータ山により、嵐や雹からも守られます。
縁あってこの地所を手に入れた弁護士のガブリエーレ・マストロヤンニは、この土地が優れたブルネッロを生むことをすぐに確信し、畑を拓きブドウの植樹を行いました。
このテロワールが育むブドウから余計なものを加えずにワインを造るため、発酵にはニュートラルなコンクリートタンクを、熟成には大樽を用いることは創業当初から決まっていました。
ブルネッロの伝統に重きを置くマストロヤンニのワインは、初期のヴィンテージからこの地の上質なサンジョヴェーゼに特有の素晴らしいアロマを呈していました。
不変の本質とワイン造りの哲学
1990年代、2人の醸造家がマストロヤンニ氏が見込んだカステルヌオーヴォ・デッラバーテのポテンシャルを、彼の目指す以上に引き出しました。
栽培から醸造まで全てを監督するアンドレア・マケッティと、コル・ドルチャなどブルネッロの多くの造り手のコンサルタントを務めるマウリツィオ・カステッリです。
彼らはマストロヤンニ氏の「伝統ありき」の信念を共にし、「ワインは畑で育つ」というポリシーを実践しています。
化学薬品を用いない栽培は有機農法に基づいていますが、ビオかどうかよりも、生態系を整え、病害が起こりにくい環境をつくることで、人の手を加えずとも質の高いブドウを得ることに重点を置いています。
収量制限も厳格に行い、質の悪いブドウはグリーンハーヴェストで除去し、収穫時には熟していないブドウや過熟したブドウを畑で選果し、枝から切り落としています。
設立当初から変わらず、コンクリートタンクでの発酵や大樽での熟成を行い、ワイン自身が発展するように、人の手の介入は最小限に抑えています。これにより、マストロヤンニのワインは常にその土地の個性と品質を最大限に表現しています。

ワイナリーの新時代と伝統の継承
創始者マストロヤンニ氏の死後、2008年に醸造所はエスプレッソコーヒー最大手のグルッポ・イリーの手に渡りました。大資本が入ることで全く別のワインになるのではと危惧する声もありましたが、イリーの買収条件は、これまでと同じスタッフ・同じフィロソフィのもと、マストロヤンニの名の下でワイン造りを続けることでした。特にアンドレア・マケッティとマウリツィオ・カステッリが醸造所に留まることが必須条件とされました。
イリーが加えたのは選果台や一部木製発酵槽の導入、セラーの改装といったハード面のみで、マストロヤンニの築いた伝統とアイデンティティは守られました。特に大樽での熟成や、設立当初に植樹された古樹から造られる最上クリュ、ヴィーニャ・スキエーナ・ダジノにはその伝統が息づいています。
2007ヴィンテージで初めてリリースされたヴィーニャ・ロレートは、マストロヤンニ家時代から構想があり、グルッポ・イリーの下で形となった新たなクリュ・ブルネッロで、伝統の継承を象徴しています。アンドレアはブルネッロ協会メンバーとして招聘されワイナリーを離れましたが、その後任はトゥア・リータで経験を積み、2022年イタリア最優秀若手醸造家賞を受賞した女性醸造家ジュリア・ハーリが務め、伝統を守りつつ新たな挑戦を行っています。
※インポーター資料より引用