ピエール・パイヤール|シャンパーニュの聖地ブジーのグランクリュ生産者
1768年からシャンパーニュの聖地ブジーに深く根差し、代々ブドウ栽培を続けてきたピエール・パイヤール。
現在は8代目となるアントワーヌとカンタン・パイヤール兄弟を中心に、この伝説的なグラン・クリュのテロワールを独自の解釈で表現し続けています。
羊飼いから始まり、宿屋や教師を経てワイン造りへと至った家族の長い歴史は、今や世界的な評論家からも絶賛される、エレガンスを極めたシャンパーニュとして結実しています。
聖地ブジーの常識を覆すパイヤールの真価
【パワフルな聖地ブジーの真髄】
彼らが本拠を置くブジーは、シャンパーニュのグラン・クリュの中でも「最もパワフルなピノ・ノワール」を生む地として畏敬の念を集めています。
隣村アンボネイがふくよかな果実味とフィネスを湛えるのに対し、ブジーは真南を向いた日照豊かな斜面と厚い粘土に覆われたチョーク土壌から、肉厚で男性的な骨格を持つワインを育みます。
名だたるメゾンがロゼの色彩とコクを求めて「ブジー・ルージュ(赤ワイン)」を奪い合うほどの圧倒的なポテンシャルこそが、パイヤールが究極のエレガンスを描き出すための壮大なキャンバスとなります。
【常識を覆す比率と母なる畑】
パイヤールの真価は、ブジーの定説を鮮やかに塗り替える独自のスタイルにあります。
ピノ・ノワールの聖地として名高いブジー全体では、作付面積の89%をピノ・ノワールが占めますが、パイヤールでは所有する11ヘクタールのうち3割以上となる4ヘクタールにシャルドネを植えています。
力強いブジーのブドウにフレッシュさとエレガンスをもたらすため、この例外的に高い比率を代々受け継いできました。
そのアイデンティティの要となるのが、ピノ・ノワールの「レ・マイユレット」とシャルドネの「レ・モトレット」という二つの単一畑、通称「母なる畑」です。
長年、植樹の際には必ずこの古樹の区画から枝を取る「マッサル・セレクション」を行い、エステートの遺伝子を次世代へと繋いでいます。
これらの畑は単一品種で瓶詰めされ、このグラン・クリュの魅力を純粋に表現したブラン・ド・ノワールとブラン・ド・ブランとしてリリースされています。

エステートが貫く継承と再生の栽培哲学
2016年に8代目のアントワーヌとカンタンが掲げた指針は、「何よりもまず、人の手による献身が必要不可欠である」という強い信念でした。
テロワールの繊細な声を聴くため、エステートでは「1ヘクタールあたり1人の担当者」がブドウ畑を管理するという、類を見ないほど精密な体制を徹底しています。
栽培は20年前からリュット・レゾネで行い、15年前からは化学肥料を一切排除。
単なる「ブドウ畑」という枠組みを超え、樹木や生垣を配置し田園風景をテロワールに再び生い茂らせることで、多様な生態系を再構築しています。
また、次世代へより良い畑を繋ぐことは、彼らにとっての至上命題です。
樹液の流れを考慮した優しい剪定を施すことで、若い樹の寿命を延ばし、複雑性を備えた熟成度の高い果実を育んでいます。
さらに、植樹の際には土壌を完全にリセットさせるため「丸2年間の休耕」という贅沢な時間を設けています。
伝統的なマッサル・セレクションによる植樹と、多様性をもたらすマサル品種の厳選。
この遺伝子の継承と粘土・白亜質土壌への配慮こそが、骨格を支える深い塩味とミネラル、そしてパイヤールの理想である「力強さとエレガンスの共存」を土壌から体現しているのです。

ピエール・パイヤールの醸造スタイル|オーク樽発酵と長期熟成が生むシャンパーニュ
【100%オーク樽とコルクが導く進化】
パイヤールの醸造は、2018年に大きな転換期を迎えました。
以前はステンレスタンクを主としていましたが、還元状態ではワインがコンパクトにまとまりすぎると感じた彼らは、微量の酸素透過を目的とした「100%オーク樽発酵・熟成」へと舵を切ったのです。
天然酵母による発酵後、すべてのベースワインはマロラクティック発酵を経て、上質な澱とともに8ヶ月間もの長期間熟成されます。
さらに「マイユレット」や「モトレット」等のトップキュヴェでは、瓶内二次発酵の打栓を従来の王冠からコルクへと変更しました。
王冠よりもわずかに多くの空気に触れることで、ワインは早い段階から酸化への耐性を備えます。
その結果、泡のテクスチャーは驚くほど滑らかになり、表現力はより豊かになりました。
この緻密なアプローチこそが、近年の温暖なヴィンテージにおいても、テロワールの個性を鮮烈に描き出すパイヤールの回答なのです。
【白亜質セラーで眠る記憶】
醸造の最終段階を担うのは、19世紀に建造された地下16メートルの白亜質セラーです。
年間を通じて10度に保たれた静寂の中で、3年から10年という果てしない時間をかけて熟成されることで、ワインは一切の濾過や清澄処理を必要とせず、自然にその個性を磨き上げていきます。
チョーク(白亜)に刻まれた時の回廊の奥深くには、1893年に先祖の手によって刻まれた「白い鳩」の彫刻が今も残されています。
繊細かつ精密に刻まれた先祖たちの署名を読み、胸を打たれる兄弟の想い。
それは、偉大なテロワールを独自の解釈で表現し抜くという、ピエール・パイヤールが250年守り続けてきた揺るぎない決意の証でもあります。
こうした執念とも言えるこだわりは、世界的権威トム・スティーヴンソンをして「全ラインナップがおすすめ」と言わしめ、ベタンヌ+ドゥソーヴで二ツ星を獲得するなど、今や世界中で最高峰の評価を確立しています。
※インポーターおよび公式情報を基に構成