ラウル・ペレス|スペインの注目ワイン
ローマ時代から長いワイン造りの歴史を誇り、中世にはサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路が通る地域としてワイン文化が発展したD.O.ビエルソ。
カステーリャ・イ・レオンの北西端、ガルシアとの州境の山間部の盆地に位置し、周囲を高い山に囲まれているためスペイン内陸と比べると温暖湿潤な気候が特徴です。
スペインの他のマイナー産地と同じく、長らくワイン造りの近代化から取り残されていた過去がありますが、1989年のD.O.昇格を経て、2000年以降は新進気鋭の生産者達が黒ブドウの品種であるメンシアから高品質な赤ワインを競うように生産するようになると、一躍世界の注目を集める産地へと成長しました。
メンシアの品質を一気に押し上げた先駆者としてまず挙げられるのが “ レルミタ ” で有名なプリオラートのアルバロ・パラシオスとその甥のリカルド・パラシオス。
濃厚なワインが流行していた1990年代後半、ビエルソのポテンシャルに注目した彼らがメンシアで造り上げたフレッシュで繊細な赤ワインは、瞬く間に世界の注目を集めました。
そして、もう1人の立役者がバルトゥイエ・デ・アバホ村を拠点とするラウル・ペレスです。
アルバロ・パラシオスのワインに大きな影響を受けた彼は、伝統を重んじつつも自身の直感に従いルールに縛られない柔軟なワイン造りを続け、今や世界で最もエキサイティングなワインメーカーの1人と評されています。

ラウル・ペレスの生産哲学
1752年からブドウ栽培の歴史を持つ家系に生まれたラウルは、バレンシアの醸造学校で学んだ後、実家であるボデガ・カストロ・ベントーサに参画。
衛生管理の向上に加え、単一区画という概念を導入し、少量生産に方向転換を行いました。
よりクリーンなブドウを収穫する為の改革も速やかに行い、メンシアの古木が持つ高いポテンシャルを余すことなく表現するための礎を築き、2007年には自身のドメーヌとなるボデガス・イ・ビニェドス・ラウル・ペレスを設立しました。
彼のポートフォリオの中心を担うのが「ウルトレイア」と「ラ・ビスカイナ・デ・ビノス」と名づけられた2つのプロジェクトです。
ウルトレイアはより造り手の個性が反映されたワインで、故郷であるバルトゥイエ・デ・アバホ村の複数の区画から収穫されたブドウで造られるのに対し、ラ・ビスカイナはテロワールの表現に重きを置き、ワイン名は其々の単一畑名を示しています。
ブドウ栽培及び醸造は「自然をリスペクトし、ブドウに与える影響を最小限にする」という理念の下に行われており、畑は馬を使って耕し、土壌と高樹齢のブドウの樹をケアすることに細心の注意を払っています。
醸造では各区画の個性がワインの中で余すことなく発揮されるよう、最低限のSO2を除き一切の添加物は使用せず、オークのニュアンスがワインを覆わないよう新樽の使用を控えています。
「欠陥のあるワインは失敗作だ」と語るラウルのワインは、正確性と透明感を兼ね備え、調和の取れたクリーンなスタイルが特徴です。
そしてそれこそが「ラウル・ペレスは典型的なワイナリーではない。それぞれのヴィンテージが独自に変化するようにし、標準的でないワインをつくる」と各方面で言われる所以です。

世界が認めるラウル・ペレス|メンシアを変えたスペインの天才醸造家
自身の名義のドメーヌを設立してから間もない2008年、WA誌は「私が試飲したこれらのワインは言葉では言い表せないほど素晴らしく、職人的だ。信じられないなら実際に体験すべきだ」と絶賛。
以降も「ラウル・ペレスはスペインで最も明確なビジョンを持つヴィニュロンだ。今回試飲したヴィンテージはその伝説を更に強固なものにしている」等、毎年惜しみない賛辞を贈っています。
デカンター誌は「世界最高のワインメーカーの1人であり、最高の才能を持つ革新者」という言葉とともに彼を紹介しており、Pedro Ballesteros Torres MWは2019年に「ペレスはまだ若く、キャリアとして恐らくまだ絶頂期に達していないが、既に多くの人々の心や記憶に刻まれる比類なきアイデンティティを持つワインを生み出している」と記しました。
メンシアという当時マイナーだった土着品種で世界に衝撃を与え、一大ムーヴメントを起こした稀代の天才醸造家は、その確固たる地位に甘んじることなく更なる進化を遂げており、これからも追いかける価値がある生産者であり続けるのです。
※インポーター資料より引用